椅子をひく

 1ヶ月ほど前、わが家で購読している地方新聞の投稿欄に「椅子をひく」というタイトルの一文が載りました。この投稿欄は女性専用で、女性ならではの視点で書かれたものがよく掲載されます。これもやはり女性だからこそ気がついたものかもしれません。
 細かな内容は思い出せないのですが、出かけた先の場所で、テーブルから退席する人たちが「椅子をキチンと元の位置に戻していかない」というものでした。もちろん子どもの頃に、学校では机に椅子をしまいなさいということは習いましたよねということの記載もありました。
 なぜ、印象に残ったかというと、一つは椅子を机の元の位置にもどすことの表現に「椅子をひく」というのかと思ったことでした。もうひとつ、こちらは投稿者の意見にうなづくことが多かったからです。
 勤務する図書室の閲覧室には、大きな閲覧机が2つとキャレルデスクが3台あります。閲覧机に各4席の椅子がありますから、合計11席の閲覧席です。他にパソコンコーナーも2席あります。混雑するほどの閲覧室ではありませんので、ゆったりと大きな閲覧机に座る人もいますし、パソコンを持ち込んでキャレルで使う人もいます。
 当院の職員のマナーが悪いだけかもしれませんが、椅子に座った利用者が立ったあと、ほとんどの人が「椅子をひかない」のです。移転のときに古い建物に残ってしまった図書室を、利用者が気持ちよく使えるようにしておきたいと思いました。新着雑誌は、キチンと並べる。カウンターは利用者が見ても整理整頓されていることなど、十分とはいえないまでも心がけてきました。カウンターからみる利用者が座る椅子も、いつも机にしまわれていることも大切です。ところが、利用者が立った後、右を向いたり左に行ったり、はては雑誌架の前まで移動をしているというように、椅子さんは足がはえて机から飛び出しています。その度に元に戻すべくカウンターから出かけていきます。時々、母親のように「椅子をキチンと元に戻しなさい!」と怒鳴りたくなったりしながら。
 皆さまの図書室ではいかがでしょう。来週から新年度が始まります。図書室のオリエンテーションで、椅子はキチンと元の場所に戻しましょうといえるとよいのですが。

(口のうるさい母親)